学部長挨拶

国際総合科学部のWebサイトにようこそ。

国際総合科学部は2015年に創設され、2021年3月に3期生を送り出した、山口大学の9つある学部の中で一番若い学部です。

そして、一番若い学部であるだけではなく、他学部とは大きく異なる特徴があります。それは、学生中心の視点で学部が設計されている点です。

山口大学に限らず、国立大学のほとんどの学部は特定の専門的学問を基盤として学部が設計されています。例えば、「経済学を学ぶための経済学部」、「医学を学ぶための医学部」です。こうした専門的学問に基づいた諸学部が重要であることはいうまでもありません。「知識基盤型社会」とも呼ばれる現代社会は様々な専門分野の高度な知識や技能を有する人々を大量に必要としているからです。

他方で、極めて複雑で多様化した現代社会(そのひとつの現れが「グローバル化」です)は、特定の専門分野の知見だけでは解決が困難な諸問題が次々に生じています。分かりやすい例を挙げれば、昨年来、世界中で極めて深刻な問題であり続けているコロナ禍は、医学・医療の問題であり、経済の問題であり、政治の問題であり、国際関係の問題であり、そして、われわれひとり一人の日常生活のあり方の問題でもあります。当たり前の話ですが、医学・医療の枠組で政治・経済の問題を解決することはできませんし、その逆も真です。

国際総合科学部は、各専門分野の重要性は尊重しつつ、現代社会の至る所に潜んでいる様々な壁の存在を問題視し、その壁を越えていくことを目指したいと思います。「壁」という少し抽象的な表現をしましたが、例えば、大学入学直後の新入生の中には、「自分は理系だから」「私は文系だから」という発想を強く持っている学生が大勢います。知らず識らずのうちに、「理系vs文系」といった対立図式を絶対的な「壁」として内面化し、自らの可能性を限定しているように感じられます。しかし、身近で重要な環境問題を例にとって考えてみれば、コロナ禍の場合と同様に、理系的知見だけでも、文系的知見だけでも解決できないことは明らかです。これは、極めて多様な要素が複雑に絡み合っているからですが、現実の社会的問題はすべてそうした性質を帯びています。

このような現状認識に基づき、国際総合科学部は、特定の学問分野を基盤にするのではなく、学生中心の観点に立ち、学生が修得する能力に基づいて設計されました。具体的に、学生がどのような能力を修得するかは、全学のWebサイトに「ディプロマ・ポリシー」の形で掲載しました。そこでの表現は大学の公式文書として長大なものとなっておりますが、そのエッセンスは「つながる力」であり、「つなげる力」です。

もちろん、大学のわずか4年間ですべての分野を取り扱うことはできません。国際総合科学部では、現代社会を積極的に生きていくために特に重要な二領域に関連する基盤的な知識と技能を修得してもらいます。さらに、課題を解決して新たな価値を生み出すための手法、そして卒業後の長い人生を新たな学びを獲得しながら生きていける能力を修得して欲しいと願っています。

二領域の1つは「グローバル化」です。「グローバル化」と言うと、英語が思い浮かぶ人も多いと思います。確かに「つながり・つなげる」ために英語は重要ですし、国際総合科学部の教育でも重点を置いています。しかし、英語力は必要条件にすぎません。「コミュニケーション」の原義である「他者と分かち合う」に立ち返り、英語力をその一部として含むより深い意味でのコミュニケーション能力を身につけて欲しいと思います。そして、その上で、グローバル化が今後一層進展していく社会で、互いの文化・社会・宗教・言語等々の多様性を尊重しつつ主体的・能動的に生きていくために「グローバル化」に関連する多面的な学びを学生時代に深めてください。

もう1つは「サイエンス」です。「科学」というと、どうしても真っ先に物理学や化学、生物学等の自然科学が思い浮かびますが、ここでは人文・社会科学を含めた、むしろ「学問一般」を示すこと、また、個別の学問分野はどうしても専門細分化しやすいのに対し、ここでは様々な個別分野を横につないでいくことを主目的にすることの2つの理由であえて「サイエンス」と表記しました。これまで述べてきたように、すべての問題はつながっています。そのつながりを理解することを国際総合科学部のカリキュラムの柱としています。

もちろん、つながりを理解するだけでは不十分です。課題を解決するために自らがつながっていき、つなげていき、そして新たな価値を創造し、社会に普及させていくために、デザイン思考や知的財産についても学んでいきます。

以上のような国際総合科学部で修得する力は、どんな分野に進んだとしても、卒業後の人生を積極的に前に進めていく力となります。是非、本Webサイトの他のページにもじっくりと目を通してください。国際総合科学部の多様性の一端をご理解いただけると思います。

2021年4月

山口大学国際総合科学部長  川崎 勝

※「崎」は旧漢字「﨑」。「大」→「立」