学部長エッセイ(2022.04)

13 コロナ禍3年目の春
14 当たり前の日常と光景

コロナ禍3年目の春

 4月第2週(4~8日)は、次週からの開講に備え、入学式を筆頭として諸々の新年度開始に伴う行事におわれました。

 この文章を記しているのは一連の行事を終えた8日(金)夕方ですが、今年の桜は3月末には既に満開となっていたので今週一杯もつかが心配でした。幸いなことに、盛りは過ぎましたが、現時点でまだ少し花が残っています。新年度開始の主役は新入生ですが、5日「入学式」、6日「新入生オリエンテーション」、7日「フレッシュマンセミナー」等々という新入生関係の慌ただしい日々をキャンパスのあちこちで咲き誇る桜の花が飾ってくれました。

 毎年の恒例のことではありますが、それでも新たな新入生の顔を見るたびに、自ずと「今年も頑張らなければ」という気分にさせられます。特に、ここ2年間のコロナ禍により、当たり前の行事を当たり前に行うことの大切さを改めて教えられました。

 2年前の春は、本格化しはじめたコロナ禍により、卒業式も入学式も急遽中止が決まってしまいました。2年前の卒業生・入学生のことを思うと、今でも心が痛みます。昨春、午前・午後2回に分けて(かつ時間を短縮して)やるという形ではあれ、全学の卒業式・入学式が復活したときは心底安堵しました。

 コロナ禍は非日常でありますが、昨年度の1年間を通じ、「非日常の日常化」が生じたように感じています。こういうときはこう対応すればよいというコツが少し掴めました。

 また、コロナ禍自体は、できるだけ近いうちに収束することを強く願っておりますが、仮に収束したとしても完全にコロナ禍前に復帰するのも困難であろうと思います。大学に引きつけて言えば、コロナ禍以前はなかなか進捗しなかった教育のオンライン化・IT 化、ひいては DX 化 が、(やむをえずという形でありましたが)一気に進展しました。コロナ禍がおさまったとしても、こうして普及した教育手法等は財産として残ると思います。

 ……といったようなことを漠然と考えながら、フレッシュマンセミナーで、新入生たちと学内を散策しました。

 国際総合科学部のフレッシュマンセミナーでは、従来、半日かけて新入生と在学生有志と教職員が一同に集って懇親を深めていました。しかし、コロナ禍で大人数が長時間集うのは好ましくないとの判断で、6, 7名ずつの基礎ゼミ単位に分かれて、親睦を図りました。

 私たちのグループでは、割り当てられた教室で自己紹介等を行った後、まだ学内の地理に不案内な新入生のためにキャンパス散策に出かけたような次第です。偶然ですが、今年度、国際総合科学部に着任されたばかりの浜橋先生に出会ったので、浜橋先生もお誘いし、徒歩でのキャンパスツアーです。

 キャンパスマップを見ていただくとお分かりのように、吉田キャンパスは、主要施設が中心部にまとまり、そのまわりを関連施設がゆったりと囲んでいますし、自然も豊富です。毎日の大部分の時間を大学で過ごしていても、実際に足が赴くのは広いキャンパスの中の極一部に過ぎません。その意味で長年山口大学で過ごしている自分にとっても珍しい機会なので、新入生が利用することが多いであろう場所を中心にゆっくりとキャンパス内を散策した次第です。

 数年ぶりに標高50m 強の「共育の丘」にも登りました。わずかな標高差であっても、見える景色は随分と異なるものです。

 新入生たちとともに、景色を楽しみながら、先にも記したとおり、今年度も一年頑張らなければ、と決意を新たにしました。

共育の丘にて。2022年度川崎ゼミのメンバー一同と、4月に本学部に赴任された浜橋先生。

当たり前の日常と光景

 山口市は4月に入ってから比較的好天に恵まれ、暖かな日が多かったのですが、4月21日(木)は珍しく朝からグズついた天気になりました。

 今年度の授業は11日(月)に開講したのですが、感染対策のために最初の1週間は原則オンライン授業でした。このため、今週月曜の18日が本格的な対面授業の始まりで、久しぶりにキャンパスに多数の学生の姿があふれました。大学は、8月中旬から9月と2月中旬から3月の年2回学生の姿がまばらな時期がありますが、やはり多数の学生で賑わっていてこその大学のキャンパスだと改めて実感します。

 オリエンテーションで短時間新入生と対面で接しましたが、授業で多数の学生を目の前にして話をすると、心地よい緊張感とともに、自分の中のエンジンが今年度も再起動してくるように感じられます。

 まだ、対面授業が始まってわずか4日ですが、新入生も吉田キャンパスに早くも溶け込みつつあるように見受けられます。もちろん、まだ慣れない学生生活に緊張感は残っているのだろうと思いますが、あと1週間すればGWに突入します。ここで約1月の変化の多い生活での心身の疲れを癒し、5月からの学生生活本番を満喫して欲しいと思います。

 ここ山口の地では、桜が完全に葉桜になった頃から、ちょうど入れ替わるように市内の随所でツツジの蕾がほころび始めます。山口市を含め、県内各地にツツジの観光名所が多数あるのですが、わざわざ名所に足を運ばなくても、あちこちで自然と目に入ってくるのは好ましいものです。これは、自分が29年前に初めて山口の地にやってきたときに驚いた点のひとつでした。

 自然とツツジの花が目に入るというのは、実は、山口大学のキャンパスも例外ではありません。これから連休の頃にかけて咲き誇っていき、5月中旬まで目を楽しませてくれますが、その姿が、大学に徐々に慣れていく新入生を歓迎しているように感じられます。

 これもまた、例年ならば、当たり前のことと見過ごしてしまう日常的な光景なのでしょうが、こうした当たり前の光景の貴重さを改めて教えてくれたのがコロナ禍であるように感じます。

雨にけぶりながら、開花しつつあるツツジ。(吉田キャンパス正門付近で)